はじめて学ぶ熱処理技術

本書籍は基本的に工場作業をするまたは工場設備について考えたり、導入する人に向けた実践的な内容の書籍である。また金属時に鉄についての基本的な組織変化などについても書かれている。そのため金属の熱処理における参考書として本誌のおける投稿記事においても熱処理工程を検討する際に大いに参考にさせていただいた。一般の専門書では一つの熱処理について考えるだけでかなり長いページを原理、結晶構造変化などについて掘り下げ非常に多くの紙面を割くためポイントがわかりにくいという問題がある。また、企業などのホームページを見るといろいろな技術についての記載はあるがアピールポイントを強く押していて全体配分が悪い場合が多く、断片的である。そのためこの分野に新しくとりかかるには全体像が見えない、ちゃんと全部の手順を調べたのかなどと確認するのが難しく、不安も残る。しかし、本書では実際の作製における工程紹介ではフローチャートから始まり、すべての工程で実際のその処理を行うとどんなことが起こるのかという視点でシンプルで実利的な記述が多い。そのため実際の実験を行う際に大いに参考になる。ただし本書が残念なのは実験に用いるような図面が少ないということである。材料はその組成により特性が変わるのでそれを活かした設計を行いたい。その際にその組成ではなくとも組成をこうするとこんな傾向があるといった傾向がつかめるような複数のTTT図などが付録などであればより活用しやすい。もちろん上流の材料製造者の思惑、企業秘密、著作権あまり公表したくないなどの意図があるので難しいが。また一部説明についてもそれに対応した図面がないためわかりにくいところがある。しかし全体としては熱処理を学ぶ１冊目としてはおすすめできる１冊であると考える。ただし原理的なところまで学ぶ目的であればもっと学術的な書を合わせて読むことをおすすめしたい。