クリストフ・ルメール 挑戦 リーディングジョッキーの知られざる素顔

もはや日本の競馬界になくてはならないジョッキーとなった、クリストフ・ルメールが1979年5月20日にフランスで生まれ、2018年にアーモンドアイとともに桜花賞をとるまでの記録が綴られた1冊です。先日の菊花賞ではフィエールマンをG1馬にした、ルメールとは一体どういう人なのかを知りたい人にオススメできます。著者は元ケイシュウNEWSトラックマンの競馬ライター・平松さとし氏。日本に来る前からルメールを取材していたという著者は、初めて見たルメールの印象を「女の子のようなルックス」だと思ったと回想しています。レース後コメントやインタビューだけでは見ることのできない一面が多々綴られており、ルメールの歩んできた軌跡を知ることができました。気になった点は2点。1点目は、文体が「〜だったのだ。」「だった。」「〜した。」ばかりでリズムがないこと。史実の書き起こしにルメールのコメントがポツポツと入る形式のため、インタビューのようすを想像しながら読める本ではなかったのは残念でした。この本を手にするのは、競馬好きでファンとしてのキャリアも長い方かと思いますが、わたしのように競馬に感動して勉強し始めたばかりの者にしてみると、地の文を予備知識のない状態で読み続けるには難しい点がありました（いろいろ調べるきっかけにはなり、勉強できたのは良かったです）。2点目は、エピソードの割愛が多々あったであろうと予測されること。生まれてからリーディングジョッキーになるまでの道のりが丁寧に書かれているので仕方ないとは思いますが、Twitterでファンに返信をして騎乗停止処分となったトラブルや、2018年1月のJRA授賞式で読まれた「ローマ字の手紙」のエピソードなど、ジョッキーその人のストーリーに触れたい人にとっては「もっと知りたい」という箇所が多くあり、どの媒体にもまだ公開されていない秘話にもっとページ数を割いていただいてもよかった気がします。特に、授賞式で妻・バーバラさんに充てた手紙の肝は、筆者がYahoo!ニュースで記している「妻さん」の下りがもっとも感動的なのに、本書ではまるまるカット…これは寂しかった…。涙なんにせよ、クリストフ・ルメール騎手「その人」にスポットライトを充てた、貴重な本だと思います。競馬をもっと知ろうと思えるきっかけになりました。